風鈴神社

自然の囁きを声として反復することでメロディーを生み出すブログ兼放射性廃棄物処理場。はじめての方は「☆☆☆」か「はじめての方向けの引用」のカテゴリーからどうぞ。

『爆発の引用』

労働生産性は、どうして追いつくようになったのでしょうか。ふたつ理由があります。ひとつは農業就業人口・農業人口が減ってきたということです。それから一方では、固定資本の増加といいますか、機械とか農機具とかの増加と、質の上昇でもっと労働生産性が上がっています。就業人口が少なければ、割る率が少なくなるから、労働生産性は上がるわけです。だから一概には、いいぞ、いいぞと云えないのです。農業の就業人口がものすごく減ったからそうなったという面があるのです。そのことはよくかんがえないといけない気がします。資本生産性は、逆に低下していて、製造業との格差も大きくなっています。つまり、ある単位資本でできる生産量は低下しています。」(『吉本隆明<未収録>講演集<3>農業のゆくえ』)
「なぜ農家の貯蓄額がこれだけ大きくなっているのかの内訳を、『白書』はちゃんと分析しています。それは都市の一般労働者と違って、土地、家屋を購入する負担費が少ないということです。つまりローンとかアパートの家賃とかがいらない。農業では代々の家があり、ことさら金を使わなくていい。それから、経営資金として次年度に使われるものが貯蓄額の中に入っている。だから大きくなっているのです。さらにもうひとつの理由は、ひとり当たりの所得では、都市の労働者に比べて、けっして多くなくて八割ぐらいです。つまり都市の労働者を1とすれば、ひとり当たりの農家の人の所得は0.8ぐらいしかない。ところが一世帯、つまり一戸の就業者、働いている人でいえば、農家は都市労働者に比べて一家族当たりの働いている人間は、一・六倍です。だから総取得が多くなり、勢い貯蓄額も多い。これが農家の経済が一見すると豊かに見えることの大きな理由です。」(同上)