風鈴神社

自然の囁きを声として反復することでメロディーを生み出すブログ兼放射性廃棄物処理場。はじめての方は「☆☆☆」か「はじめての方向けの引用」のカテゴリーからどうぞ。

ほとんどすべての人のための哲学入門(ラノベ風)9

登場人物
戯言遣い
遊女

コスプレ会場

戯言「それでお姉さん、私は何をしたらいいですかね?」
遊女「単刀直入に言いましょう、神埼空海を裏切らせて欲しい」
戯言「あなたは私に何を要求されているのかわかっているのですか?世にも稀な正義の人で、寛容にして強靭、高貴にして賢明で、人間に対する貢献をすべてと見なしているような人を裏切らせるというのですか?」
遊女「だからこそよ、彼の口癖はわかっているわ、『裏切るのなら自分の意志で裏切れ』、自分の命すら人間のために軽視する有り様、でも一度あの人が憎いと思えば、その特性のことごとくが反転し、私を侮辱するものになる。絶対に許しませんとも、あの方が自分の信念に絶望するまでは」
戯言「一体何があったかお聞かせ願えますか?」
遊女「いいですとも、そうすればあの方がどんなに善良であるかがわかろうというもの、かつて私はあの方に三度告白をしました、その度ごとにはかなく破れ、あの方は『妹を作るつもりはない』と拒否なさいました。しかし私は見てしまったのです、あの方がある女を妹のように扱っているのを」
戯言「それはひどいですね、しかし何かの偶然では?」
遊女「それなら私も我慢できましょう、しかし見れば見るほど親しい間柄のようで、気のおけない雰囲気を醸し出し、私は苦しみ悶えました。あの方の子供だって何度も作って差し上げたのに、子供を作っただけでは、兄妹にはなれない世の定め、所詮遊女の身の上ですもの、あの女を見るまでは私もつれない仕打ちに黙って耐えてきましたが、一度嫉妬の焔が燃え上がると、心の奥まで燃え上がるのも早いもので、あっというまに復讐に飢えた、みじめな姿に成り果てました。せいぜい笑ってください、他人が理解しないであろうことだけが、私のせめてもの慰めです」
戯言「敬意を込めて軽蔑いたしましょう。私の方も、人の悩みを食い物にするけしからん輩だと言われたりします。その度ごとにこう思うことにしています。『彼らにはみじめな人の気持ちがわからない、それが彼らの幸福だ。私の幸福はみじめな人の苦悩を慰めること、そしてこれこそ真の人の幸福があるのだ』と。お姉さんの願いは必ず叶えて差し上げます」
遊女「運命の加護がありますように」
戯言「ではこれで」

戯言「これは困ったな、いい名誉になりそうと思って引き受けたけど、空海を堕とすなんて割に合わない、こっちが先に改心させられてしまう。むしろ直接手を出さずに、配下の方を裏切らせるべきだろう、そうすれば彼らが空海を裏切らせてくれるかもしれない。そうと決まれば善は急げだ」