風鈴神社

自然の囁きを声として反復することでメロディーを生み出すブログ兼放射性廃棄物処理場。はじめての方は「☆☆☆」か「はじめての方向けの引用」のカテゴリーからどうぞ。

ハンナ・アーレント『全体主義の起源2 帝国主義』

決定的なことはむしろ、およそいかなる法規定もないような立場にある人々は、自動的に法体系の逆立ちを引き起こすという点である。無国籍者とは「法律がそれに対して何の供えも持たない変則状態である」人間である故に、彼が正常状態に戻れる唯一の道は、法律に定められている規範を犯すこと、すなわち犯罪を犯すことである。ある特定グループの人々が実際に無国籍となっているかどうか否かを知るには、彼らが犯罪を犯すことによって、彼らの状態がよくなるのかを問うだけで事足りる。たいしたことのない強盗行為がある人間の法的身分をたとえ一時的にせよ改善するようなら、彼は人権を剥奪された人間だと確信できる。法に定められた規範に対する公認された例外をなす犯罪という道のみが、無権利者をして他の人々すべてと同じに扱われる立場、すなわち法の前での平等が再び与えられる立場に帰らしめることができる。(…)われわれの時代においては絶対的な無権利が絶対的な潔白に対する刑罰であることが明らかになったのである。