風鈴神社

自然の囁きを声として反復することでメロディーを生み出すブログ兼放射性廃棄物処理場。はじめての方は「☆☆☆」か「はじめての方向けの引用」のカテゴリーからどうぞ。

資本としてのコンピュータとブラックホール情報2

コンピュータは貨幣の交換可能性を代理するが故に、貨幣の交換価値を最終的にはゼロにしてしまう。その過程を順に追っていこう。まず最初にあるのはコンピュータの使用価値=貨幣の交換価値という場面からである。貨幣の可能性としての交換価値がコンピュータの可能性の使用価値と等しくなるのはもちろんコンピュータを貨幣で購入するときである。これ以前には、貨幣はコンピュータを買うための用意や生活費としての使用価値を維持することができ、一般的な等価物としての交換価値を持つことができる。だが一度コンピュータが導入されると、情報という概念が導入される。ここで重要なのはコンピュータによるインターネットが情報を光速に近い速さでどこにでも伝達することができるということである。これは文字によるメディアよりも洗練されている。情報はインターネットによって光速で伝達されることを前提にしているから、即座に消費できる情報には価値がない。ここから情報の価値は、光速の伝達速度をいかに減速できるかということで測られることになる。これには情報の理解不可能性ということが情報の減速と等しいということが含まれる。暗号の価値はここにある。この場合、貨幣の交換価値が0どころかマイナスになるのは、コンピュータが、貨幣の使用価値以上の情報を交換価値として生産できたときだということになる。G-G‘、G`-G‘‘,……、G-G‘-G‘‘-G‘‘‘……。そのとき第二の転倒としてコンピュータは情報の一般等価物となる。情報の使用価値は貨幣の交換価値に対する相対速度に依存するのだが、このことは貨幣によるコンピュータへの投資を早めるから、これで貨幣の使用価値はコンピュータの交換価値と完全に転倒されたことになる。つまり貨幣の交換価値が情報生産と完全に区別がつかなくなったときに貨幣の媒介機能は無化され、コンピュータが直接交換の媒介機能を担うことになる。もちろんコンピュータ内には情報としての貨幣は存在するが、それはコンピュータの交換可能性の一つにすぎないことになる。このようにして貨幣の機能を引き継いだコンピュータを超越するようなものはなんなのだろうか。それは減速時間が無限なブラックホールであるような情報である。減速時間が無限であるような情報はもはや情報としての形態を持ってはいないが、まさにそれゆえにそれは情報としての価値を持っている。ブラックホール情報の価値は他の情報の伝達能力をどれだけマイナスにできるかによって価値が測られる否定的な情報である。ブラックホール情報がインターネット空間で維持され続ける場合、コンピュータの交換可能性は無化される事になり、情報の価値も同時にすべてが最大になってしまう(インフレ)。それはブラックホール情報がコンピュータに代わって情報の一般等価物として機能することを意味する。コンピュータは一般等価物の一般等価物なのだから、ブラックホール情報は交換不可能な一般等価物なのである。この「理解できないものを理解できないままに使用する」情報とはまさに魔法にほかならない。魔法とはブラックホール情報の使用価値なのだ。だからコンピュータの媒介なしに魔法を使える存在が現れたとしたら、我々はそれを魔法使いと呼ぶしかなくなるだろう。「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」。そして「高度に発達していない魔法なら科学に見えるかもしれない」。